【連載】不動産投資の考え方 Vol.007 買い付けのタイミングと物件の調査
連載第七回では買い付けタイミングの見極め方と指し値の入れ方、また物件調査のポイントや物件の性質について解説いたします。
「買い付けタイミング」の見極め方と「指し値」の入れ方
よく「どのタイミングで指し値を入れるべきか」と悩む人がいますが、指し値は「この物件を買いたい」という自分の意思表示だと考えてください。指し値を入れるのは早ければ早いほどいいのです。ただし、誰もがほしがるような物件の場合、指し値では後回しにされるケースが多く、本当に自分の基準に合う物件だと思ったら、まずは満額で買い付けを入れることをお勧めします。
買い付けが殺到するような物件だと、一番手になるのは容易ではありません。ほしい物件が二番手以降だった場合はどうすべきか。それには誰よりも一番早く現地物件を見て、その直後に担当者と直接会うことです。紙による買い付けの意思表示より、結局は人と人の関係が大切です。
相場に比べて価格が安い物件、利回りの良い物件は「現地を見ていない買い付け」が入ることを業者は承知しています。そのため、買い付け後に現地調査をして「やっぱり、やめます」といわれることも想定しています。そこに「もう現地を見てきましたよ」という人が現れたら、「この人は、現地を見た上で買い付けを入れている」と話が一歩進むわけです。やはり、いち早く現地を見て、担当営業マンに連絡するのがベストです。
ネガティブ情報を加味しても、「満額で買ってもいい」物件であれば、満額で買うべきですし、余分にコストがかかるのであれば、その分を値引きした形で指し値交渉を行います。買い付けを出した後でも交渉を行っていいのです。
「指し値」を入れて現地確認をすると、ネガティブ情報がわかったり、仲介業者へのヒアリングで新たなデメリットがわかることはよくあります。その場合、先に買い付けを出していても、価格交渉の余地があります。最終確定は契約して決済がされるまで。そこまでに何があるかわかりません。融資をどのように付けるのか、現金買いなのかといった「購入資金の裏付け」を早めに伝えることも大切です。業者は「この人は間違いなく買える」と安心できるのです。
なかには、自身の経歴や属性、資産背景を経歴書としてまとめておく人もいます。しっかり書類を用意できる人は、「慣れている、準備ができている」と映るので好印象となります。
経歴書に記載すべき情報としては、年収、金融資産、家族構成、所有物件の概要、既存借入額、所有物件の入居状況があるといいでしょう。これを買い付けと同時、あるいは直後に送するのです。担当者に会う前でも構いません。
物件売買プロセスの参考まで、なごみでのやり取りの流れを紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
まず、物件情報が出るとLINEで配備します。それに対して顧客から「資料がほしい」と返信がきます。そこで、こちらから「属性と金融資産の状況を教えてください」とお願いをしています。
ここで顧客が「買えるか買えないか」のフィルタリングをしないと、問い合わせ件数が多すぎて対応しきれないためです。その後、物件のマイソク(物件資料)をスマホカメラで撮影したものを送って、話を進めていきます。
現地内覧はLINEでアポを取ります。「明日、見たいです」とか「今日は何時に見られますか」といった連絡をもらいます。早ければ住所を知った段階で、ご自身で現地に行かれる方もいらっしゃいます。
現地を見てネガティブ情報として「思ったよりも外壁に劣化が見られる」などが見つかれば、そこで「100万円くらい安くなりませんか」と相談していただく場合もあります。
なかなか買えない人というのは、とにかくいろいろな情報を全部集めて、それから買い付けを入れているようです。このやり方だと、今の市況で良い物件を押さえるのは至難の業なのです。
「物件調査」で押さえるべきポイント
今はGoogle Mapsなどがあるので、現地に行かずとも、ある程ります。しかし、においや隣家や住人の雰囲気、音の問題などは実ばわからないものです。
実際に、現地調査で押さえるべきポイントを解説します。
現地に行ったときは、物件の雨帰り状況はチェックしておくべきです。天井の四隅や、ベランダの防水は重点的に確認するポイント。これらの場所が雨漏りの原因となるケースが非常に多いのです。
他にも、扉や窓の開閉を確認することも大切です。開け閉めがスムーズでない場合、建物が歪んでいる可能性があるからです。
配管を気にする投資家もいますが、そのときに判断しきれない場合も多いものです。過去になごみが購入した物件では、井戸水を利用しており、赤錆やごみが混じった水が出るので、結局水道を引きました。特にオーナーチェンジ物件であれば実際に生活している人がいるため、買った翌日から突然赤錆が出ることは考えにくく、そこまで心配する必要はありません。
注意点をいうなら、この段階であまりネガティブなイメージ先行で固定観念をもって見ないほうがいいでしょう。入居者にとっては許容できる範囲である場合もありますし、どうにも解決できない問題は少なく、そのほとんどは解決方法がありますから。
また、リフォームについては、細かく見てもやってみなければわからない部分もあります。それゆえ、心配であれば、自己資金に余裕をもって取り組む、もしくは安い物件を狙うことでリスクヘッジするという方法が有効です。
投資成功の秘訣は「ポジティブ思考」にあり!
現地調査に出向いたところ、「隣地の木が生い茂って越境しているが、所有者が誰だかわからない」というようなこともあります。このような物件を「手に負えない」と敬遠する投資家は少なくありません。
敷地の後ろがジャングルみたいな家でも、まずは隣地の地主や市に手入れを依頼する手紙を送ってみましょう。その結果「やらない」と回答があれば、同意を得た上で、自分で処理してしまえばいいのです。誰もやらないのであれば、伐採費用だけで問題は解決します。越境した部分の夢定なんて大して費用がかからないものです。この状態だから誰も買わないわけなので「指し値をするためのいい材料だ」と、ポジティブに捉えればいいのです。
かつてなごみで、隣が宗教施設で休みのたびに多くの人が集まり、大きな音が聞こえてくる、という物件を競売で競落しました。もちろん、調書にはきちんと説明があって、だからこそ「面白いな」と思って入札したのです。落札後は特に問題も起こりませんでした。普通に入居者も決まったのです。人によっては忌避したい部類に入るかもしれませんが、まったく気にしない人もいるわけです。
その他、バブル期に建てられたアパートは、駐車スペースが不足していることが珍しくなく、その分安く売りに出されることがあります。普通の人が現地を見に行っても「駐車場を確保したいけど、隣の土地を売ってくれるかどうかわからない。これはやめたほうがいいかな」と思うことでしょう。
なごみとしては、「駐車場がなくても、地方だったらなんとかなるので、とりあえず買ってしまおう」と考える場合もあります。隣地にあたっていくと、意外とスムーズに土地を売ってくれたり、貸してくれるケースが多いのです。売ってくれないこともありますが、7割くらいで駐車場の確保は可能でした。
他にも、隣家がゴミ屋敷になっている物件も買いましたが、問題なく入居付けができました。
こういった“ワケあり物件”でも、解決策をまず考えて、妙案がひらめいたらチャンスです。皆が買わない物件だからこそ安く買うことができる。まずは「お金で解決できないか」と考え、解決できるのであればいくらなのか、その分の予算をどう工面するかを検討します。あるいはその分、物件価格の値下げ交渉をするのも手です。
「任意売却物件」「競売物件」は本当におトク?
債権者が何らかの理由で抵当権を入れた物件が売りに出されることを、「任意売却」といいます。売りに出される理由は、「債務が弁済されない」ことがほとんどで、不動産競売に申し立てずに債権の回収を図る方法です。
こうした物件は不動産会社や、弁護士事務所が窓口になることが多いようです。金融機関との折衝の中で任意に売却価格が決められています。任意売却物件は内見できるケースが多く、窓口である弁護士や不動産会社に問い合わせれば、中も見せてもらえるので確認したうえで購入できるのがメリットです。
任意売却物件といっても、さまざまな物件があり、実際に内見して選定する点では一般的な投資物件と変わりません。
「任売だから」と毛嫌いしたり、特別視する必要はありません。ただ、「経済的な事情」があって売り出される物件なので、残債との兼ね合いもあり、相場以上の価格で出る物件にもよく遭遇します。任売物件でも、必ず安いとは限らないのです。
「競売物件」は、債権者が強制競売に踏み切った物件のことを指します。
裁判所で入札が行われますが、今は参考サイトを見たり、業者が見ている競売情報誌を個人で購読するなど、格段に情報が取得しやすくなりました。期間も予定も立てやすいので買いやすくなっています。
また、占有者に対する強制執行が簡単にできるようになり、それを商売にする業者も増えています。
このように参入しやすくなった結果、アパートの入札はときに何十件と札が入るくらい加熱しており、価格も高騰しています。落札価格を見てみると、一般市場で買う物件と価格差がほとんどないようなものもあります。
競売は国が主催するオークションです。チャンスは平等でフェアではありますが、なかなかうまみを出しにくいのが正直な感想です。しかも「室内の状態が見られない」というデメリットもあります。なごみとしては、「手間がかかる物件」が多いので、お勧めしません。
余談ですが、税金の滞納で差し押さえられた不動産・動産がオークションにかけられる公売は「強制執行」の仕組みがありません。さらに手間がかかり、場合によっては裁判を起こす必要があるので、入札物件に占有者がいる場合は注意しましょう。
次回は、不動産を渡り歩く人、通称『不動産ジプシー』を題材として取りあげます。