【連載】不動産投資の考え方 Vol.011 住宅ローンと投資の関係
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連載第十一回は、投資における住宅ローンの考え方、また共同担保について解説いたします。

不動産投資で規模の拡大を目指すには、融資を受けることが絶対条件になります。しかし「多額の融資を背負うことを、配偶者にどう説明すればいいのか」と悩むサラリーマン投資家は少なくありません。日本人は幼い頃から親に「連帯保証人の判子だけは絶対押すな」といわれてきた人も多く、融資という名の「借金」に抵抗感があるのは仕方のないことです。
以前、政府系金融機関では連帯保証人を求められ、特に「生計を一にしない保証人」を高く評価していました。しかし現在は、金融庁のガイドラインで「連帯保証人を求めない」ことを指導しており、不要になりました。また、B銀行でも連帯保証人は不要で、全体の傾向としては昔のように連帯保証人を求められることは少なくなってきています。これは「アパートローン」のようなパッケージ商品が普及したことが影響しています。
ただ、すべての金融機関で連帯保証人が不要になったわけではなく、ある銀行では個人で融資を受ける場合、奥さまあるいは法定相続人が連帯保証人になる必要があります。「妻は専業主婦で収入はないが、大丈夫だろうか」と、不安になる人もいるかもしれませんが、収入の有無は問われません。金融機関としては、今後の相続の発生を想定していたり、債務責任の所在を明確にするという意図があるのです。
不動産投資について家族の理解や協力を得られている人を見ていると、日頃のコミュニケーションを大切にしていると感じます。「家計の管理を奥さまに任せきり」という人はまずいませんし、状況を共有し合っています。そういった人は夫婦で相談に来ることも多く、しばらくするとご主人だけでなく、奥さまは奥さま個人で不動産投資を始めていたりします。
しかし、どうしても投資を毛嫌いする人にいきなり勧めても逆効果ですから、まずは日頃の会話やコミュニケーションを大事にすることが重要なのではないでしょうか。
また、最近は不動産投資が一般化してきて、女性投資家が執筆した書籍も数多く出版されています。そういった書籍を読んでもらうことで、共感してもらうという手もあるかもしれません。
結論からいうと、住宅ローンがあっても不動産投資は始められます。ただ、パッケージローンを取り扱う金融機関では「年収の何倍まで」という融資基準のため、住宅ローンがある場合は自宅の残債分を差し引いた分が投資用不動産に使える枠になります。
逆にいえば、先に投資用のローンを大きく借り入れしてしまうと、後で住宅ローンが組みにくくなるケースもあります。ただ、自身の年収と比較して極端に高額な住宅ローンでなければ、ネガティブに捉える必要はありません。
それぞれにライフプランがあり、投資家自身は「不動産投資を進めたい」と考えても、家族は「投資用のアパートより自宅がほしい」と考えるのは仕方のないことです。実際に私の知るサラリーマン投資家の中にも、先にマイホームを購入する人もいます。ただし、そこは投資家ですから相場より安い中古物件を見つけて、売ればいつでも利益が出るように賢く自宅を購入している人や、賃貸併用住を購入する人などもいます。
不動産投資は、最初のフェーズに最も時間がかかります。また、資産が右肩上がりに増えていくまでには、さらに長い助走期間がかかります。この助走期間で自宅購入に頭金を使ってしまうと、その分だけ資産が増えるまでの時間がかかります。
人生のライフイベントでは、結婚、出産、自宅購入、子どもの教育費と、お金のかかるイベントが続きます。その中の優先順位を考えておかないと、投資できる金額も変わります。私自身も不動産投資を進める中で、この点は真剣に考えました。自分好みの注文住宅を建てて毎月10万円以上返済という方法ではなく、私の場合は自宅用に賃貸併用住宅を建てて、毎月3万円の返済で済むようにしました。
実際、注文住宅と比べたら賃貸併用住宅のグレードは少し下がるし、音の問題に気を配ることもあるでしょう。家族がよき理解者になるには、日頃からコミュニケーションをとって、資産プランを一緒につくっていくことが大事だと思います。

ここで考えるべきポイントは「住宅ローンの繰り上げ返済分を投資に回したらどうなるか」ということです。
私が不動産業界に入った当時でも、金利は「過去最低、歴史上ない安さ」だとよくいわれていました。営業マンは「金利がこれだけ安くなっている今が買い時です!」と喧伝していたものです。ご存じのように、その後も住宅ローンの金利は下がり続けています。個人にとって「低金利で長期間お金を借りられる」融資は、住宅ローンより他にありません。
投資物件への融資の場合、住宅ローンより金利が高く、返済期間も住宅ローンほど長期間にはなりません。貯蓄を住宅ローンの繰り上げ返済に使っても、毎月の返済額は数千円減る程度です。たとえば金利1%、返済期間35年の条件で100万円の繰り上げ返済を行った場合、毎月のローン支払額は約2822円安くなり、500万円の場合は1万4114円安くなるだけなのです。
住宅ローンは非常に安い金利なので、そのまま返済を続けて、毎月の貯金は物件購入の自己資金に回すべきです。特に不動産投資の規模拡大期にある人は、安易に住宅ローンを繰り上げ返済してはいけません。
たとえば、手元に現金500万円ある人が、利回り12%の戸建てを現金購入すれば毎月5万円の家賃収入を得られますが、住宅ローンの繰り上げ返済をしても、月々の支払いが1万4114円減るだけです。毎月のキャッシュフローを考えたら、繰り上げ返済よりも投資に回すほうが賢明なのです。
あるサラリーマン投資家が「自宅を共同担保に入れることに妻が拒否反応を示しています」と悩んでいました。確かにマイホームを担保にして「誰かに取られるかもしれない」と考えるのは、あまり気持ちがいいものではありません。
しかし、不動産投資という「不動産賃貸業」の事業を起こすにあたり、有効活用できるものがあれば活用すべきです。自宅は躇するかもしれませんが、たとえば家族が遺した空き家などがあれば、共担としても活用しやすいでしょう。
属性が高くない人の最終手段として「両親の自宅を共同担保に差し出す」方法もあります。ただ、ご健在の親御さんの住宅を共担に出すというのは、かなり丁寧な説明を行った上で、理解と協力を求める必要があります。ハードルは高いものの、こういった共同担保を用意できれば融資の可能性が広がります。
共同担保として一番理想的なのは、戸建て住宅や小さなアパート、あるいは区分所有マンションなら築10年くらいのファミリータイプのものなど、自とは別に無借金で所有する物件です。担保物件が自分の名義であれば、家族や配偶者への説得も必要ありません。
物件がない人の場合、自宅でも何でも使えるものを使ったほうが、目指すゴールに早く近づけると思います。
一方、共同担保のデメリットは「一度設定された共担は簡単には外せない」ことです。
借りたお金を完済するまで、担保は外せないので注意が必要です。
たとえば1500万円で購入した物件が、積算評価1000万円だったため不足分500万円の担保として自宅を抵当に入れたとします。その後、返済が進み500万円を返したら、「自宅の抵当は外せるのでは」と考える人がいるかもしれませんが、金融機関の同意なくしては難しい場合があります。
自宅を共同担保に入れるということは、収益物件と自宅のどちらにも1500万円の抵当権の設定がされます。
次回は借り換えや金利交渉、有利な融資の受け方についてご案内します。
連載第十一回は、投資における住宅ローンの考え方、また共同担保について解説いたします。
保証人となる「家族」に理解してもらうコツ

不動産投資で規模の拡大を目指すには、融資を受けることが絶対条件になります。しかし「多額の融資を背負うことを、配偶者にどう説明すればいいのか」と悩むサラリーマン投資家は少なくありません。日本人は幼い頃から親に「連帯保証人の判子だけは絶対押すな」といわれてきた人も多く、融資という名の「借金」に抵抗感があるのは仕方のないことです。
以前、政府系金融機関では連帯保証人を求められ、特に「生計を一にしない保証人」を高く評価していました。しかし現在は、金融庁のガイドラインで「連帯保証人を求めない」ことを指導しており、不要になりました。また、B銀行でも連帯保証人は不要で、全体の傾向としては昔のように連帯保証人を求められることは少なくなってきています。これは「アパートローン」のようなパッケージ商品が普及したことが影響しています。
ただ、すべての金融機関で連帯保証人が不要になったわけではなく、ある銀行では個人で融資を受ける場合、奥さまあるいは法定相続人が連帯保証人になる必要があります。「妻は専業主婦で収入はないが、大丈夫だろうか」と、不安になる人もいるかもしれませんが、収入の有無は問われません。金融機関としては、今後の相続の発生を想定していたり、債務責任の所在を明確にするという意図があるのです。
不動産投資について家族の理解や協力を得られている人を見ていると、日頃のコミュニケーションを大切にしていると感じます。「家計の管理を奥さまに任せきり」という人はまずいませんし、状況を共有し合っています。そういった人は夫婦で相談に来ることも多く、しばらくするとご主人だけでなく、奥さまは奥さま個人で不動産投資を始めていたりします。
しかし、どうしても投資を毛嫌いする人にいきなり勧めても逆効果ですから、まずは日頃の会話やコミュニケーションを大事にすることが重要なのではないでしょうか。
また、最近は不動産投資が一般化してきて、女性投資家が執筆した書籍も数多く出版されています。そういった書籍を読んでもらうことで、共感してもらうという手もあるかもしれません。
「住宅ローン」は投資の障壁になるか?
これから不動産投資を始める人の中には「住宅ローンがあるけれど、不動産投資ができるのか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。結論からいうと、住宅ローンがあっても不動産投資は始められます。ただ、パッケージローンを取り扱う金融機関では「年収の何倍まで」という融資基準のため、住宅ローンがある場合は自宅の残債分を差し引いた分が投資用不動産に使える枠になります。
逆にいえば、先に投資用のローンを大きく借り入れしてしまうと、後で住宅ローンが組みにくくなるケースもあります。ただ、自身の年収と比較して極端に高額な住宅ローンでなければ、ネガティブに捉える必要はありません。
それぞれにライフプランがあり、投資家自身は「不動産投資を進めたい」と考えても、家族は「投資用のアパートより自宅がほしい」と考えるのは仕方のないことです。実際に私の知るサラリーマン投資家の中にも、先にマイホームを購入する人もいます。ただし、そこは投資家ですから相場より安い中古物件を見つけて、売ればいつでも利益が出るように賢く自宅を購入している人や、賃貸併用住を購入する人などもいます。
不動産投資は、最初のフェーズに最も時間がかかります。また、資産が右肩上がりに増えていくまでには、さらに長い助走期間がかかります。この助走期間で自宅購入に頭金を使ってしまうと、その分だけ資産が増えるまでの時間がかかります。
人生のライフイベントでは、結婚、出産、自宅購入、子どもの教育費と、お金のかかるイベントが続きます。その中の優先順位を考えておかないと、投資できる金額も変わります。私自身も不動産投資を進める中で、この点は真剣に考えました。自分好みの注文住宅を建てて毎月10万円以上返済という方法ではなく、私の場合は自宅用に賃貸併用住宅を建てて、毎月3万円の返済で済むようにしました。
実際、注文住宅と比べたら賃貸併用住宅のグレードは少し下がるし、音の問題に気を配ることもあるでしょう。家族がよき理解者になるには、日頃からコミュニケーションをとって、資産プランを一緒につくっていくことが大事だと思います。

「住宅ローンの繰り上げ返済」はNG!?
ところで、住宅ローンを使ってマイホームを購入した投資家から「住宅ローンは繰り上げ返済したほうがいいのでしょうか」と相談されることがあります。ここで考えるべきポイントは「住宅ローンの繰り上げ返済分を投資に回したらどうなるか」ということです。
私が不動産業界に入った当時でも、金利は「過去最低、歴史上ない安さ」だとよくいわれていました。営業マンは「金利がこれだけ安くなっている今が買い時です!」と喧伝していたものです。ご存じのように、その後も住宅ローンの金利は下がり続けています。個人にとって「低金利で長期間お金を借りられる」融資は、住宅ローンより他にありません。
投資物件への融資の場合、住宅ローンより金利が高く、返済期間も住宅ローンほど長期間にはなりません。貯蓄を住宅ローンの繰り上げ返済に使っても、毎月の返済額は数千円減る程度です。たとえば金利1%、返済期間35年の条件で100万円の繰り上げ返済を行った場合、毎月のローン支払額は約2822円安くなり、500万円の場合は1万4114円安くなるだけなのです。
住宅ローンは非常に安い金利なので、そのまま返済を続けて、毎月の貯金は物件購入の自己資金に回すべきです。特に不動産投資の規模拡大期にある人は、安易に住宅ローンを繰り上げ返済してはいけません。
たとえば、手元に現金500万円ある人が、利回り12%の戸建てを現金購入すれば毎月5万円の家賃収入を得られますが、住宅ローンの繰り上げ返済をしても、月々の支払いが1万4114円減るだけです。毎月のキャッシュフローを考えたら、繰り上げ返済よりも投資に回すほうが賢明なのです。
「共同担保」のメリット&デメリット
不動産投資を進める上で、住宅ローンのある自はハンデになることもありますが、住宅ローンの返済がある程度進んでいる、もしくは住宅ローンを払い終わった自宅は大きな武器となります。それは、共同担保として使えるからです。あるサラリーマン投資家が「自宅を共同担保に入れることに妻が拒否反応を示しています」と悩んでいました。確かにマイホームを担保にして「誰かに取られるかもしれない」と考えるのは、あまり気持ちがいいものではありません。
しかし、不動産投資という「不動産賃貸業」の事業を起こすにあたり、有効活用できるものがあれば活用すべきです。自宅は躇するかもしれませんが、たとえば家族が遺した空き家などがあれば、共担としても活用しやすいでしょう。
属性が高くない人の最終手段として「両親の自宅を共同担保に差し出す」方法もあります。ただ、ご健在の親御さんの住宅を共担に出すというのは、かなり丁寧な説明を行った上で、理解と協力を求める必要があります。ハードルは高いものの、こういった共同担保を用意できれば融資の可能性が広がります。
共同担保として一番理想的なのは、戸建て住宅や小さなアパート、あるいは区分所有マンションなら築10年くらいのファミリータイプのものなど、自とは別に無借金で所有する物件です。担保物件が自分の名義であれば、家族や配偶者への説得も必要ありません。
物件がない人の場合、自宅でも何でも使えるものを使ったほうが、目指すゴールに早く近づけると思います。
一方、共同担保のデメリットは「一度設定された共担は簡単には外せない」ことです。
借りたお金を完済するまで、担保は外せないので注意が必要です。
たとえば1500万円で購入した物件が、積算評価1000万円だったため不足分500万円の担保として自宅を抵当に入れたとします。その後、返済が進み500万円を返したら、「自宅の抵当は外せるのでは」と考える人がいるかもしれませんが、金融機関の同意なくしては難しい場合があります。
自宅を共同担保に入れるということは、収益物件と自宅のどちらにも1500万円の抵当権の設定がされます。
次回は借り換えや金利交渉、有利な融資の受け方についてご案内します。